日本政府は、2025年12月26日に閣議決定した次の年度予算案を受け、2026年度防衛予算の増額をめぐる国会での審議を続けている。一般会計の歳出総額は122兆3092億円で、そのうち防衛関連は9兆353億円(米軍再編関係経費を含む)と、当初予算として初めて9兆円台に乗せた。背景には、中国や北朝鮮を含む周辺の軍備動向への警戒に加え、ロシアによるウクライナ侵攻以降に顕在化した「無人化・分散化」の戦い方への対応がある。議論の焦点は、拡大する軍事費をどう賄い、どこに重点配分するのかという国家安全と財政の綱引きに移っている。
2026年度防衛予算は9兆353億円へ 国会審議の争点
政府案の柱は、防衛予算を前年度当初比3.8%増とし、装備の取得・維持、抑止力強化を同時に進める点にある。防衛費は2013年度以降、増加基調が続いており、今回の編成で12年連続で過去最大を更新した。
国会では、金額の妥当性だけでなく、歳出の中身が「新規の強化」なのか「過去の契約の精算」なのかが問われている。防衛関連支出のうち、米国製を含む装備購入を分割で支払う、いわゆる「兵器ローン」の返済が4兆5398億円に上り、総額の半分超を占めるとされるためだ。新しい装備を増やす余地が圧迫される構図は、安全保障上の即応力と財政の硬直化を同時に議論させる。
財源面では、防衛費に建設国債を約6000億円充てる枠組みが続く。戦後長く「禁じ手」とされてきた国債の防衛充当は、岸田政権が2023年度予算から事実上の解禁に踏み切った経緯があり、高市政権下でも是非が俎上に載る。結局のところ、拡大する防衛政策を「持続可能な形」に落とし込めるかが、審議の中心線になっている。

防衛力整備計画の進捗と43.5兆円契約ベースの積み上げ
今回の予算案は、政府が進める防衛力整備計画(契約ベースで5年間43.5兆円)の4年目に当たる。予算案を含めた時点で、計画全体の81%に達したとされ、装備や体制整備が「計画の後半局面」に入ったことを示す。
この数値が意味するのは、単年度の増額が目立つ一方で、複数年契約の負担が将来に連続していく現実だ。国会審議でも、毎年の増額が常態化するなか、次の局面は「何を新たに積むか」より「既に積み上がった契約をどう消化するか」に軸足が移りやすい。
防衛装備の調達は、調達期間が長く、為替や資材価格の影響も受けやすい。こうした条件が重なると、当初の見込みより支払いが膨らみ、ほかの分野を圧迫する可能性も出る。国家安全を支える基盤としての防衛力を維持しながら、財政運営の説明責任をどう果たすのかが、今後の論点を先回りしている。
関連する議論として、政府が2022年末に掲げた「防衛費をGDP比2%へ」という目標が、予算編成と一体で語られてきた経緯もある。国会の場では、数値目標そのものの評価と同時に、実際の配分がどこまで有効な抑止力につながるのかが問われる展開だ。
無人機構想SHIELDに1001億円 ロシア侵攻後の戦い方に対応
歳出の目玉の一つが、沿岸防衛強化構想「SHIELD(シールド)」の構築に充てる1001億円だ。政府は、ロシアによるウクライナ侵攻以降、無人機が戦場の偵察・攻撃・防空で果たす役割が拡大した点を踏まえ、「大量運用」と「分散配置」を前提にした体制づくりを急ぐ。
国会審議では、無人機の導入が「コストが安いから」だけで語れるのかも焦点になる。無人化は、調達価格を抑え得る一方、センサー、衛星通信、データリンク、運用ソフトといったデジタル依存を強める。つまり、装備そのものよりも、運用のための情報基盤が脆弱なら効果が落ちるという指摘が出やすい領域だ。
たとえば、監視やターゲティングで得た情報を、現場から指揮系統へ安全に届けるには、通信の冗長化やサイバー対策が欠かせない。防衛のデジタル化が進むほど、システム統合や保守、訓練にかかる費用が積み上がるため、単純な「安上がり」とは言い切れない。無人機の大量運用が、日本の安全保障の現場で実効性を持つかどうかは、装備と同じ重さで運用設計が問われる。
議論が次に向かうのは、無人化の推進が自衛隊の体制、産業基盤、そして同盟国との運用協力にどこまで波及するかという点だ。日本政府の予算案は、国会での審議を通じて、拡大する軍事費を「能力」として可視化できるのかが試される局面に入っている。





