国際銀行による暗号資産関連の金融サービスが、試験的な段階を越えて本格化しつつある。ドイツ最大手のDeutsche Bank(ドイツ銀行)は2025年7月、Bitcoin Magazineの報道を通じて、ビットコインとその他暗号通貨の資産管理(カストディ)サービスを2026年に開始する計画が伝えられた。欧州ではMiCAの運用が進み、米国でもステーブルコイン関連の法整備が動く中、規制に沿った保管や取引の受け皿を求める機関投資家の需要が、銀行側の導入継続を後押ししている。
ドイツ銀行が2026年に暗号資産カストディ開始へ 国際銀行の導入継続が鮮明に
ドイツ銀行が計画するのは、機関投資家や法人顧客向けのビットコインおよびデジタル資産の資産管理基盤だ。2025年7月1日付で、Bitcoin Magazineが「ドイツ最大手銀行がビットコインと暗号資産のカストディを計画」と報じている。
同報道では、同行がBitpandaのカストディ基盤を統合しつつ、スイスのデジタル資産インフラ企業Taurusとの連携を継続する構想が示された。狙いは、保管だけにとどまらない包括的なソリューション整備で、伝統的金融の枠内で暗号資産を扱う体制を固める点にある。
こうした動きは単発ではない。ドイツではSparkassen-Finanzgruppeが、約5,000万人の顧客向けに仮想通貨取引の提供を計画していると公表しており、国内大手によるサービス拡張が同時進行している。規制順守と顧客保護を前提に、銀行が「扱わない」から「どう扱うか」へと舵を切り始めた構図だ。

MiCA運用とAML強化が後押し 欧州で暗号資産金融サービスが制度化へ
欧州では、EUのMiCA(Markets in Crypto-Assets)が全面適用段階に入り、暗号資産サービス提供者(CASP)を巡る実務が「運用フェーズ」に移った。規制が一枚岩でない点は残るものの、従来の断片的な枠組みから、共通ルールに基づく監督へ進んだことは、銀行にとって参入の前提条件になりやすい。
同時に、マネーロンダリング対策も厳格化の方向だ。EUでは各国でばらつきがあったルールから、より統一的な枠組みへ移行する議論が進み、暗号資産事業者にもオペレーショナルレジリエンスやサイバー対策の要件が重くのしかかる。結果として、鍵管理や監査、インシデント対応まで含めた体制構築が可能な主体――つまり大手金融機関――に追い風が吹きやすい。
例えば、国境をまたぐ資金移動や顧客確認の実務では、各国の施行タイミング差が「サンライズ問題」として指摘されてきた。こうした摩擦が残るほど、グローバル企業は規制整合的な保管先を求め、銀行側もブロックチェーン関連の実装を「守りの投資」として位置づけやすくなる。制度化が進むほど、銀行にとっては参入コストではなく競争条件になっていく。
欧州の制度整備が進む一方、利用者側の関心は「安全に預けられるか」に集約されがちだ。そこで次に焦点となるのが、規制に沿ったカストディが市場に与えるインパクトである。
機関投資家の資産管理ニーズが拡大 規制下カストディが市場構造を変える可能性
銀行のカストディ参入は、機関投資家が暗号資産にアクセスする際の「経路」を変える。取引所口座や自社保管だけでなく、監督当局の目が届きやすい枠内でデジタル資産を保有できる選択肢が増えれば、投資委員会やリスク管理部門の承認プロセスも組み立てやすくなるからだ。
米国側の環境変化も、こうした需要を刺激してきた。2025年には、銀行当局が暗号資産活動に関する従来の慎重姿勢を見直す動きが続き、ステーブルコインを巡ってはGENIUS法が成立したと整理されている。欧州と米国で規制の輪郭が見え始めたことが、国際的な運用を行う投資家にとって「比較可能なルール」の土台になりつつある。
価格動向も、銀行の意思決定を説明する材料になりやすい。提供されたデータでは、記事執筆時点でビットコインは10万6855ドルで取引され、24時間で0.69%下落とされていた。短期の上下はあっても、銀行が見ているのは、規制下の保管インフラが整うことで市場参加者が増えるかどうか、という中長期の論点だ。
実務面では、カストディは単なる保管箱ではない。鍵管理、監査対応、取引時の統制、サイバー攻撃や内部不正への備えが一体で問われる。だからこそドイツ銀行が2026年という慎重なタイムラインを取った点は、コンプライアンス対応の複雑さを物語る。結果として、参入できる主体が絞られるほど、銀行の提供する金融サービスが市場の標準になっていく可能性がある。





