日本ブロックチェーン基盤株式会社は、国内企業が運営するパブリックチェーンJapan Open Chain(JOC)およびEthereum上で、日本円建てステーブルコイン「EJPY」を発行する方針を正式に決めた。発行の前提となる信託型スキームの構築に目途が立ったとしており、JOC上での発行・流通は2026年度内を見据える。暗号資産市場では価格変動が常態化するなか、価格安定を志向するデジタル通貨が、企業間決済やデジタル資産決済の取引の中核として機能できるかが焦点になる。
Japan Open ChainでEJPY発行へ 信託型ステーブルコインが示す現実路線
同社によると、EJPYはJOC上での発行・流通を中核に準備を進める日本円建てステーブルコインだ。発行・償還の枠組みや信託財産の管理、システム要件、法令対応などについて、受託者となる事業者と具体協議を重ね、信託型スキームの組み立てに一定の見通しがついたという。
設計の狙いは、投機色が強い仮想通貨の値動きとは異なる形で、実際の商流に沿った決済を成立させる点にある。単にトークンを発行するのではなく、JOCを「ブロックチェーン基盤」から、価値移転を伴う決済インフラへ近づける——というメッセージが前面に出る。
JOCはEthereum完全互換のレイヤー1で、コンソーシアムにより運営・管理されている。バリデータには、株式会社電通、TIS株式会社、ピクシブ株式会社、株式会社はてな、SBINFT株式会社、テレビ朝日グループのextra mile株式会社、京都芸術大学など14社が参画し、最終的に21社体制を目指すとしている。企業名が並ぶことで、運用面の説明責任とガバナンスを強く意識した構造になっている点が特徴だ。

企業間決済とデジタル資産決済 ステーブルコインが取引の中核になる条件
EJPYで想定されるユースケースは、企業間決済、デジタル資産決済、送金、Web3サービス内決済など「実需」を軸に据える。重要なのは、ステーブルコインが「価格の安定したトークン」という説明を超え、金融の現場で中核として機能するかどうかだ。
例えば、デジタルコンテンツ事業者が海外パートナーへ支払う場面では、着金までの時間や手数料、為替手当の設計がコストを左右する。決済そのものをブロックチェーン上で完結させられれば、処理の可視性が高まり、バックオフィスの突合にかかる負担も変わり得る。こうした「業務設計の変化」が起きて初めて、ステーブルコインは取引の中核に近づく。
一方で、暗号資産の時価総額や価格変動が話題になりやすい市場環境では、利用者は「決済に使うお金」と「投資・投機の資産」を厳密に分けたがる。実需の決済で使われるデジタル通貨が広がるほど、投機と決済の境界線をどう引くかが問われる。市場の変動を追う論点としては、暗号資産市場の時価総額の変動も参照されている。
同社はEJPYについて、利用者向けの取り扱いを電子決済手段等取引業者との連携を前提に設計するとしている。販売、移転、償還などの実務は関係法令に基づく体制で提供される想定で、ここが「使える決済」になるかを分ける現実的な論点になる。
規制とマルチチェーン対応 分散型金融に広がる波及と次の焦点
EJPYはJOCを中心にしつつ、マルチチェーン対応も視野に入れるとしている。複数のチェーンにまたがる設計は、分散型金融(分散型金融)やデジタル資産の流通実務と相性が良い反面、運用・監督の論点が増える。どのネットワークで発行・流通させ、償還や不正対策をどう統一するのかは、普及局面で避けて通れない。
日本では2023年6月1日に施行された改正資金決済法により、いわゆる「デジタルマネー類似型」のステーブルコインが電子決済手段として整理され、制度上の取り扱いが明確化した。EJPYが強調する信託型スキームや取引業者との連携は、この制度環境の中で実務に落とし込む動きといえる。
海外でもステーブルコインの枠組み整備が進み、国境をまたぐ決済の議論は加速している。EUの暗号資産規制の動向は、EU MiCAとステーブルコインの整理が参照されることが多い。国内プロジェクトが海外の規制や慣行とどう接続するかは、クロスボーダー決済を「絵に描いた餅」にしないための前提条件になる。
同社は今後、受託者、電子決済手段等取引業者、金融機関、事業会社、自治体、システムパートナーとの連携を進めるとしている。発行条件や取扱事業者、対象ブロックチェーン、利用可能サービスは、当局や関係者との協議・手続きを経て順次公表するとしており、次の焦点は「誰が、どの領域で、どう使うのか」という実装の輪郭がどこまで具体化するかに移りつつある。





