消費行動の変化が国内調査で浮き彫りに

国内調査で明らかになった消費行動の変化について詳しく分析し、最新のトレンドとその影響を紹介します。

物価高とデジタル化が同時進行するなか、日本の消費行動変化が複数の国内調査で鮮明になっている。デロイト トーマツ グループが公表した2025年度の調査では、食料品など生活必需品の支出増は「買い過ぎ」ではなく価格上昇の影響が大きい一方、外食や旅行は節約に傾くなど、消費者の選別が進む構図が見える。送料やサステナブル商品の価格も購入判断を左右し、企業の市場分析や設計思想に再調整を迫っている。

デロイト トーマツ国内調査が示すインフレ下の購買傾向

デロイト トーマツ グループの「2025年度 国内消費者意識・購買行動調査」(全国20~79歳の男女5,000人を対象にウェブで実施)では、インフレ環境が購買傾向を押し広げたというより、「生活に必要な出費が押し上げられた」実態が前面に出た。食料品の消費金額が前年より増えた人は24.6%で、そのうち67.4%が理由に物価高を挙げている。日用品でも、支出増の理由として物価上昇を挙げた回答が61.9%に達した。

一方で、家計が“外向き”に動く領域は引き締まっている。外食で「消費が減った」層は29.9%、旅行では28.8%で、前年からいずれも約2ポイント増えた。必需品が上がるほど裁量支出が削られるという、典型的な消費心理が数字に表れたかたちだ。

東京都内で共働き世帯向けの食料品宅配を利用する会社員が、平日はまとめ買いを抑えて価格を比較し、外食頻度だけ落とす——そんな行動は珍しくない。調査結果は、こうした「守る支出」と「削る支出」の線引きが、広い層で常態化していることを示している。

国内調査により明らかになった消費行動の変化について解説し、最新のトレンドとその影響を詳述します。

20代の推し活支出と世代別の消費パターンの分岐

同調査で際立つのは、世代ごとの消費パターンの分岐だ。消費意欲に関して、20代だけが「消費を増やしたい」意欲を維持し、とくに推し活への支出増意向は12.9%と他世代と差がついた。国内旅行や食料品も、増やしたい分野として挙がっている。

反対側では、「消費を増やしたいものはない」と答える割合が全体で増え、節約志向の広がりがうかがえる。貯蓄・投資への関心は30代で前年差9ポイント減の22.0%、40代は22.4%となり、将来への備えよりも日々の生活費を優先せざるを得ない現実が透ける。

この世代差は、広告表現や販路設計にも直結する。SNSで情報を集め、共感で背中を押されて支出する若年層に対し、家計防衛色が強い中年層は“納得できる根拠”を求める。企業がトレンドを追うだけでなく、どの層にどの価値を届けるのかを言語化できるかが勝負になる。

短尺動画から購買につながる流れが注目されるなか、日本でもTikTokのコマース機能をめぐる動きが取り沙汰されてきた。周辺動向はTikTok Shopの展開に関する解説などで整理されており、若年層の可処分支出がどこに向かうかは、プラットフォーム側の仕組みとも連動していく。

スマホ起点の比較購買が当たり前になった現場

別の消費者購買動向データ(2024年上半期)でも、金額が微増する一方で購入数量が減り、単価が上がる傾向が示されている。値上げ局面で「買う量を絞り、必要なものを選ぶ」動きが強まり、比較・検討の起点としてスマホが定着した。

店頭で成分表示やレビューを確認し、最安値を見比べたうえで“今日は買わない”という判断も増えた。買わなかった理由まで含めて行動を捉えることが、今後の市場分析では欠かせない。

調査の読み解きが広がる背景には、メディアや解説動画での二次分析もある。数字が示す傾向を、生活実感に落とし込む視点が求められている。

送料とサステナ価格が左右するECの意思決定とデジタル経済の影響

ECの購買判断では、商品価格と同じくらい「あとから乗る費用」が効く。デロイト トーマツの調査では、EC利用時に重視する点として57.5%が配送料を挙げ、とくに高年齢層で顕著だった。必需品や衣料品では「送料無料でないと買わない」層が約50%を占め、送料が意思決定の分岐点になっている。

とはいえ、全員が一律に“送料無料至上主義”ではない。「送料無料の下限額があれば購入してもよい」が約3割、「数百円程度の送料は許容する」が約2割と、条件付きで受け入れる層もいる。物流費が上がりやすい局面では、EC事業者にとって価格設計と配送体験の両立が、収益と顧客満足を同時に左右するテーマになる。

サステナブル商品の購入でも、意識と行動のギャップが確認された。サステナビリティを意識して商品を選ぶ人は約3割にとどまり、価格が高い場合に買わない割合は食料品で58%、衣料品で57%に達した。かつて関心が高いとされてきた60~70代女性でも、約半数が価格を理由に購入を避けるという。

このギャップは「関心がない」よりも厄介だ。理解は進んでも、家計が厳しければ行動に移せない。企業側には、環境配慮の説明だけでなく、価格差の根拠や便益の提示、透明性の担保が求められる。デジタル経済では、情報の出し方一つで評価が拡散するため、信頼の設計が競争力になる。

送料をめぐる議論は、物流の2024年問題以降も続き、EC各社の施策比較が常に話題になりやすい。購入体験の細部が、リピートと離脱を分ける時代に入っている。