若年労働者のストレス増加が全国調査で明らかに

全国調査により、若年労働者のストレスレベルが増加していることが明らかになりました。労働環境の改善が求められています。

株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区)は、若年労働者メンタルヘルス不調の実態をまとめた定量調査の結果を公表した。全国調査として実施された同調査では、過去3年以内に不調を経験した正規雇用者のうち、退職に至った割合が全体で25.3%、20代では35.9%に上るなど、若年層の離職リスクが際立つ。相談体制の整備が進む一方で、職場に不調を伝えないまま重症化するケースも示され、ストレス増加の背景にある労働環境やデジタル要因への目配りが急務になっている。

パーソル総合研究所の全国調査が示した若年労働者のストレス増加

調査は、20~69歳の男女2万人を対象にしたスクリーニングの後、取締役・社長を除く20~69歳の男女3,025人に対してインターネットで実施された。期間は2024年8月6日~8日および8月29日~9月5日で、若手の実態に焦点を当てるため、20代非管理職や管理職、メンタル不調経験者も厚めに抽出している。

同研究所が定義する不調は、強い不安や抑うつ、ストレス起因の体調悪化など、生活の質に影響する状態を幅広く含む。ポイントは、診断名の有無に限らず、職場のパフォーマンスや日常生活に影響するレベルを扱っている点だ。

結果として目を引くのが、過去3年以内に不調を経験した正規雇用者のうち、当時の勤務先を退職した人の割合が全体で25.3%に達したことだ。20代では35.9%と突出し、仕事のプレッシャーや環境変化の影響が、キャリア初期の定着を揺さぶっている状況が浮かぶ。人手不足が続く中、若手の離職は現場の再採用コストだけでなく、育成投資の回収にも直結するため、企業側の関心は高い。

全国調査により、若年労働者のストレス増加が明らかになりました。職場環境や対策について詳しく解説します。

相談は2人に1人、それでも退職に直結する職場環境のギャップ

不調時の行動では、「職場内での相談・報告」は46.1%と、およそ2人に1人にとどまった。医師やカウンセラーに相談・治療を受けた割合は49.3%で、社外資源に先にアクセスする人も少なくない。

一方で、20代に限ると、職場に相談しなかった層の退職率が35.2%と高い。相談できないことが、そのまま離職に結び付く構図が見える。なぜ言い出しにくいのか。相談しなかった理由で最も多かったのは、「相談しても解決につながらないと思った」が34.5%だった。

象徴的なのは、正規雇用者の約4割が「相談後に職場がどう動くかイメージできない」と答え、同じく約4割が「相談すると評価が下がる、居づらくなる」と捉えていた点だ。制度や窓口があっても、運用が見えなければ利用は進まない。ここに、職場環境の“説明不足”という論点が生まれる。

管理職側の負担も軽くない。部下のメンタル不調対応経験がある管理職のうち、約5割が「精神的な負担が大きかった」、約4割が「業務上の負担が大きかった」と答えた。対応のしわ寄せとして、他メンバーの業務量増加を課題に挙げた割合は35.2%で最多、次いで業務調整の負担が26.2%だった。

現場で根強い誤解にも数字が出た。過去3年以内に不調で休職した人のうち、「仮病」を使ったとする回答は1.0%にとどまる。それでも管理職の一部には「本当に不調か分からない」との疑念が残りやすく、疑いが対応の遅れを招く恐れがある。信頼の欠損は、精神健康のケアを難しくする最大の障壁になり得る。

労働時間とスクリーンタイムが映す労働負担、若手に広がるテクノストレス

若年層の背景要因として、調査はデジタル利用と心理傾向に光を当てた。正規雇用者を対象にした分析では、若い世代ほどスクリーンタイムが長く、20代の「仕事のある日」は平均5.2時間、「仕事のない日」でも平均5.3時間だった。働く日と休む日の境目が薄れ、端末利用が常態化している様子がうかがえる。

スクリーンタイムが長いほど、脳疲労・眼精疲労が高く、ストレス反応も強まる傾向が示された。特にテレワーク実施者や、情報処理・通信技術職、間接部門、事務職などデスクワーク中心の職種で長くなりやすい。長時間労働そのものに加え、オンライン会議やチャット対応が連続する働き方は、別種の労働負担を生む。

ここで問われるのは、労働時間の管理だけで足りるのか、という点だ。時間外の上限規制やストレスチェック制度など、法制度に基づく枠組みが整っても、常時接続のプレッシャーや情報過多は、従来型の対策では捉えにくい。若手の不調を「個人の弱さ」と片付ければ、改善は遠のく。

もう一つの要因として、調査は若年層ほど「人目を気にする」「受け身」「失敗への恐れ」「怒られたくない」「対立回避」といった傾向が強いことを示し、これらを拒否回避志向と整理した。拒否回避志向が高い場合、上司からの叱責でストレス反応が高まりやすい。デジタル上の評価や可視化に慣れた世代ほど、否定的フィードバックを重く受け止めるのか。

調査は、相談のハードルを下げるには非管理職への啓発が欠かせないとも指摘する。管理職向け施策(ストレスチェックやラインケア研修など)の実施率が高い一方、非管理職向けの「セルフケア研修」や情報提供・啓発の実施率は34.7%にとどまった。制度を「知っている上司」と「知らない部下」の間に溝ができれば、支援につながる前に離職が起きる。

若手のストレス増加は、本人の問題に閉じない。労働環境、評価不安、デジタル疲労、マネジメントの手触りが絡み合う以上、企業に求められるのは“窓口を置く”から“使われる仕組みを見せる”への転換だ。